義父、アパートを建てる

田舎の貸工場で家賃収入があった義父は、もっと家賃収入を増やそうとアパートを建てました。
工場を売り、その近くに新しく土地を買い、アパートを建てました。その土地建物を担保に借金をし、足りない分は親戚から借りていたようです。

 

アパートを建てる

借りていたようです、とは無責任な言い方に聞こえるかもしれませんが、義父は借金について全く教えてくれません。
こちらがお金の話を聞くと異常なほど怒るのです。

ですから、私たちが把握しているお金や不動産の流れは、残っている書類や、もれ聞こえてくる話から推測するしかありません。


ともかく、義父は田舎にアパートを建てました。

 

終わらない借金

アパートの家賃収入を借金返済に充てていましたが、建てた後に下水道が通ったことで水洗トイレの改修が必要になり、いろいろな追加工事費がかさんだようです。

資金繰りをする前に工事をしてしまった義父は、工事代金が払えません。

もう担保にするものがありません。
すると義父は地方の消費者金融から借入をしてしまったのです。
当時の返済書類を見ると、振込先や郵便物の送り主が個人名義になっていました。
また、何度かその名義も変わっていました。
怪しい業者です。
今はもう存在しない業者のようですが、当時は金利も高かったようです。

 

息子のお金もつぎ込む

そして、義父は息子のお金も借金返済に使うようになりました。

ちょっと貸してくれないか。なあ。
今月どうしても足りないんだよ。
親のために金出してくれよ。


そんなふうに泣き落とされて、夫は給与振り込み口座の通帳を預けてしまったそうです。
後に取り返すまで10年以上、夫の給料は義父に使われていました。

 

大きな自転車操業

義父は自転車操業をするようになりました。
そして、それはどんどん大きくなっていきました。

アパートの修繕費が必要になるとどこかから借金。
その借金の返済日にカードローンで借金。
家賃収入は土地建物のローン返済に消えていきました。

どうにもならなくなった義父は、新しいアパートを建てることを誰かに薦められました。
アパートを建てると担保にできるものが増えるし、何より『借金も財産のうち』なのですから。

どうやら義父の周りには、よからぬことを進言する仲間がいるようでした。

 

共同経営

ところが、年齢的に高額な借入ができなかったようです。
義父は新しいアパートの土地を買い、建物は夫の名義で借り入れることにしたのです。
そんなやり方を勧めてくる人たちが、義父の周りにはたくさんいるようです。

家の商売だと思って協力してやっていかないか。
うちは家族みんなでアパート経営しようじゃないか。
だからお前も経営者だ。
俺が死んだらみんなお前のものだからな。

なあ、親を助けるのは当たり前だろ?
ちょっと手伝ってくれよ。

息子の名前で銀行から金を借りるのは当たり前のことなんだ。
みんなそうしてるって銀行員が言ってたぞ。

おい!誰が育ててやったと思ってるんだ。
親がやることに従えばいいんだ!


夫は、義父が毎日毎日懇願してくるのに根負けして、ローン契約書にサインしたそうです。

 

オレのモノ

義父と共同でアパート経営のはずでしたが、アパートを建てたのは義父の故郷の田舎です。自宅からは数百キロ離れた地方です。

夫がちょっと見に行くということもできず、関係者に会うこともままならないまま、色々な契約や交渉などは全て義父一人で進めたそうです。
夫は必要な書類にサインしたり、保険契約のために健康診断を受けたりしましたが、どんな建物でどんな間取りなのかすら知らされなかったそうです。


オレに任せておけばいいんだ
なーんも心配することはないさ
お前は何もしなくていいんだ


そして、アパートの建築は、いつのまにか義父と工務店との間で建築契約を結ばれて進んでいきました。

完成したアパートは、義父の名前で不動産屋と賃貸管理契約が結ばれました。
家賃が振り込まれる口座も、義父の口座でした。

 

3棟目

それから10年。義父は73歳です。
義父は3棟目のアパートを建てる計画を立てました。

土地建物はすべて夫の名義での借金になりました。
さすがに73歳で40年ローンは無理だったようです。

今度は夫が現地へ出向き、銀行とのローン契約にサインして、ハウスメーカーと会って説明を受け、設計図も確認し、今度こそはと安心していました。
借り入れをした銀行で夫は口座を開き、その口座に入金された家賃から返済金を自動振替する手続きもしました。

通帳とカードは義父が持っていきました。


ところが、後に見つけたハウスメーカーとの建築契約は、義父の名前になっていました。
見積書の段階では、夫の名前になっていたのに、本契約になると義父が署名していたのです。

これはのちに発覚する義父の企みのひとつだったのですが。

 

お金の使い道

そしてまたしても、アパートの家賃収入は義父が使い道を決めています。

アパート修繕費の支払い。

1棟目のアパートの借金返済。
2棟目のアパートの借金返済。
3棟目のアパートの借金返済。

親戚への借金返済。
カードローンの返済。



義父の新車購入費。


もう、なにがどうなっているのかわかりません。