忘れる

これも、認知症外来を受診する前から出ていた義父の症状でした。

 

忘れる

はじめはとぼけているのかと思ったのです。

もともと義父は、自分の仕事に口を出されるのをとても嫌がっていました。
地域の役員をしていましたが、夫や私には地域の情報を一切教えてくれません。回覧板すら見せてくれません。

私は自分が町内会で何班に住んでいるのかすら教えてもらえなかったほどです。

だから、私たちが何か聞いても、のらりくらりとかわされていました。

引き受けた用事

そのころ義父は、地域の共同施設の組合長をしていました。
設備のメンテナンス工事の時は、道路使用許可など役所に届ける書類があるようです。

義父が引き受けたのは、その書類に義父が持っている組合印を押すこと。
義父が組合長をしている間に何度もやってきたことです。

工事業者から電話

ある日の朝、書類取りにいきますからよろしく、と工事業者から電話がありました。

義父、昨日から田舎に行ってるんですけど…。

どんな書類ですか?
え、水色の社用封筒?はい、見たことあります。
今日役所に持って行くもの…。

 

探す

義父の紙の山から、一枚の書類を探さなくてはなりません。
やみくもに探しても見つかりそうもありません。

とりあえず、田舎の義父に電話しましょう。

 

わからねえっ!

義父に電話して、
「工事業者からこんな電話があったんですけど、書類ってどこにあるんですか?」と聞く。

「あ?何がっ?」

「明日、設備工事があるんですって。○○会社の封筒に入っている工事の書類に、組合のハンコ押してもらいたいって。水色の封筒らしいんです。」

「何言ってんだかわからねえっっ!」プチッ

 

山に挑む

仕方がありません。
私は仕事を休んで、義父の紙の山に挑むことにしました。


端の方から目当ての水色の封筒を探します。
ついでに、紛れ込んでいるゴミは捨てましょう。

山の8合目付近に、水色の封筒を見つけました。
中を見ると、空です…。

その近辺を念入りに探します。
7合目くらいまで掘っていくと、同じ会社の封筒がもうひとつ出てきました。

 

書類発見

ありました!
組合印が押されています。もう渡すだけの状態になっていました!

良かったです。ハンコは探さなくてすみました。

すぐ工事業者に電話すると、書類を取りにきてくれるそうです。
まあ…よかったですよね。仕事には行けないけど。

 

キレイさっぱり

数日後、田舎から帰ってきた義父に事の経緯を話しても、キョトンとしています。
そんな書類は知らないというのです。
組合名や住所、組合長である自分の氏名まで書いて、ハンコを押した書類です。

キレイさっぱり忘れています。

文字を書いてハンコを押す、という行動が伴ったことを忘れています。
これはおかしい、と思ったのでしょう。私はこのことを日記に詳しく書き残していました。

後々義父の手帳を見た時、この書類を受け取ったこと、○日までに提出することが書いてありました。