しまう

認知症外来を受診する2年くらい前のことです。
義父は物をしまい込むことも増えてきました。

 

しまう

義父の『しまう』は整理整頓とは違います。

キャラクターはてな

辞書には、『整理』は必要なものと不要な物を分けて不要な物を捨てること。
『整頓』は必要な物を取り出しやすいように置いておくこと、とあります。

 

捨てないし、取れない

義父がしまうものは、いる物もいらない物も混ざったまま。分別はしません。
ふと気が向いて傍にある物を今いるところから見えなくするのです。

ドラマで見たことがある、散らかった部屋に急に人が来た時に、手当たり次第に押し入れに突っ込む、というのが近いですね。

だから、取れない。
必要な物がどこにあるのかわからなくて、取り出せないんです。

 

見えなくする

義父がするのは『見えなくする』だけです。
見えないから忘れちゃう。

そして、見えなくした行動そのものを忘れちゃう。
だんだん家族以外にも迷惑をかけるようになってきました。

 

花の苗

義父は公園の管理ボランティアをしていました。

公園には花壇があり、季節の花を地域の皆さんと植え付けて育てていました。
その年も役所の人がパンジーの苗を持ってきてくれました。
100個くらいあったでしょうか。

これから皆さんと花壇に植えるのでしょう、と思いきや。

 

しまっちゃった

植えるのかと思いきや、義父はパンジーの苗を公園の掃除用具入れにしまいました。

その日に用事があって植えられないのかと思いましたが、翌日もそのまま。
心配になってコッソリ物置のカギを開けて覗いてみると、真っ暗な中で水ももらえず萎れてきたパンジー。

かわいそうに。
せめてもと、水だけはやっておきました。

 

忘れてた

義父は自分の仕事に口や手を出されると、烈火の如く怒り出します。

キャラクターくすん

もう一緒に住めねえなっ!と言い出します。



だから勝手に物置から出すわけにもいきません。

さりげなく、義父にいつ植えるのか聞きました。

お義父さん、公園の花壇、次は何のお花を植えるんですか?
もう冬になるからパンジーですかねー。

ンあ?
花壇?そったらこと知らねえなぁ。
花もねえしな!

昨日来た役所の人、お花を持ってきたんじゃないんですか?

役所?来ねえよ。
そういえば最近来ねえな。電話してみるかな。

すっかり忘れていました。
花をしまったことどころか、役所の人が来て話をしたことすら覚えていませんでした。

 

苗の行く末

義父の頭の中では苗のことは無かったことになっていますから、もう植えることはありません。

この様子では、他のボランティアさんに声をかけていることもなさそうです。
このままでは苗がダメになってしまいます。

それではかわいそうです。義父に内緒で、夫と二人で植えました。

 

無事、根付く

その後、パンジーは無事に根付いたようです。
次々に花を咲かせてくれました。

不思議なことに、義父はその花壇に何の疑問も持たず水やりをしています。
自分が植えたのか、誰かが植えたのか、そのことはどうでも良いようです。