これまで義父の過去の行動や性格について書いてきましたが、やっと時間が戻ってきました。時系列で話を進めます。
義父が車を買えなかった時の話です。
義父、新車注文する
義父は2、3年ごとに新車を買っていました。
歳をとっても、借金だらけになっても新車を買います。
というか、借金をして車を買います。カーローンじゃありません。
銀行や金融公庫から借金をして買うのです。しかも代金より多めに借り入れます。
数台前の大型のa車の時は、700万円以上の借り入れをしていました。
今までは、気付くと駐車場の車が新車になっている状態だったのです。
車屋さんから電話
年末、ディーラーの営業マンから、夫に電話がありました。
私たちの車のメーカーではないところだったので、セールスかと思いましたが、夫は「はい、はい。わかりました。」と断ることなく話しています。
電話を切った夫に、なんの電話?と聞くと、義父がローンを組めないので代わりに署名捺印してくれと言われたと話してくれました。なんで?
帰ってきた義父にどういうことなのか聞きました。
すると、
申込書にお前が名前書けば車が買えるんだってよ。
まあ、頼むねー。
と、軽く言うではありませんか。
ローンが組めないのだったら、新車を買わないで今の車に乗ってればいいじゃないかと言えば、また烈火の如く怒り出します。
名前書くぐらいいいじゃないかっ!
とか
オレが買うんだからお前は名前だけ書けばいいんだっ!
とか
車なけりゃ仕事にならないでしょうがっ!
とか。
私達はとても悩みました。
なぜならこの時、義父は認知症外来で免許証の返納を勧められていたのです。
夫とディーラーへ
翌日、夫と私の二人でディーラーへ行きました。
営業マンの話を聞いて、事情がわかってきました。
義父と話をした営業マンは、義父の様子がおかしいと感じたようです。
そして、80歳を超えた高齢の義父には自動車ローンは組めないと思ったようです。
でも、車は販売したい。
そこで夫の名前で買ってもらえばいいのではと提案したそうです。
それにしても、なぜそうまでして新車を買わなければならないのでしょう。
今の車に乗っていればいいのに、というと、衝撃の事実が!
今、義父が乗っている車は『残価設定ローン』で購入していたのです。
しかも保証人は夫でした。
夫は署名した覚えはありません。
車の返却予定日は1ヶ月後。
どうしよう。
翌日もディーラーへ
現在の車の返却手続きなどの書類を夫の名前に訂正して、現在の車についての手続きは終了。
問題は次の車です。
買うか、やめるか。
義父は代金は自分が支払うから、名義だけ夫に貸してくれと言っています。
義母もまだ義父の認知症を認めていないので、車がなくなるのは嫌だと言います。
それに夫の車は2シーター。義父母を乗せることができません。
私の車は4シーターだけど2ドアです。
義父母を乗せて病院や買い物に行くには使い勝手が悪いのです。
そこで、4人乗りの、乗り降りしやすいスライドドアの軽自動車がいいよね、ということになって、S車を試乗してカタログをもらって帰りました。
これなら万が一のときは車椅子を積むことができます。
もしも義父が運転した場合でも、他人に迷惑をかけないように、安全装置が付いている車を選ばなくてはなりません。どんなにダメだと言っても、義父は運転してしまいそうです。そういったことを考えて、家用の軽自動車を買おうということになりました。
その4日後
そうやって義父母のことを第一に考えていた私たちを裏切ることが発覚しました。
年末近くになって、義妹が孫に会いにきてほしいと義父母を誘ってきました。
私たちが送っていくか、電車で行くかしてほしいと言ったにもかかわらず、これで最後にするから、と義父の運転で出かけて行きました。
そして、義妹の家から帰るときに車をぶつけていたのです。
しかも、親戚の修理工場で勝手に直していたのです。
義弟が、「このくらいすぐ直りますよ〜。おじさんの修理工場に持ってけばいいんじゃないっすか?」といったそうです。
修理工場からの電話連絡で知った私たちは怒りました。
義母まで私たちに事故を隠すなんて。
義父とは話にならないので、義母に何があったのか聞きました。
ところが義母も事故を隠していて後ろめたかったのでしょう。
子供でもわかるような嘘で取り繕ったり、逆ギレしたりでなかなか真相を話しません。
バックでポールに
気性の激しい義母は、興奮していろんなことを怒鳴り散らしました。
その言葉をつなげると、こんな状況だったようです。
義妹の家からバックで道路に出ようとした時に、道路と歩道の間にあった高さ50センチくらいのポールに気付かずにぶつかった。
義妹一家が4人揃って見送りに出ていたのに、誰もポールに気付かなかった。
車の後部バンパーの下にへこみができた。
ぶつかってから気付いた6人で車の状態を見た。
義母が、この車はお兄ちゃんの名義で、買い替えが決まってると話した。
すると義弟は、このくらいすぐ直りますよ〜。おじさんの修理工場に持ってけばいいんじゃないっすか?バレませんよ、と隠すことをそそのかした。
夫は義母とケンカになりました。
わかったろう?お父さんに運転はもうさせられないんだよ。
だって、ちょっとポールに当たっただけじゃないか。
今回はね。ポールじゃなくて小さい子供だったらどうするの!
ポールだけだよ!子供なんてひいてないよ!
そりゃそうだよ。そうなる前に運転をやめさせなけゃいけないでしょう。
だいたい事故を俺に無断で修理するってどういうこと?
だって(義弟)くんがそうすればいいって。
だから、なんであいつの言うこときいてるの?俺の名義の車でしょう。もう下取りの査定まで済んでるんだよ?それをこっそり修理するなんて非常識でしょう。
だって…あんたに言ったら…もう車に乗るなって言われちゃうから…
当たり前でしょう!もう何年も前から言ってることだよ!
お父さんはもう運転するのは危険なんだよ。
包丁持って町を歩いてるのと同じなんだよ。わかってよ!
軽自動車購入
年が明けてすぐ、夫はS車を購入しました。
ただ、義父が途中まで申し込みしてしまっていたのと、突然の出費の準備ができず、また残価設定ローンになってしまいました。
いろいろな手続き
翌日、ディーラーのカーローンの確認電話がありました。
今回は夫が購入者なので、問題なくローンが組めました。
その次の日には、車庫証明を取るために、義父が借りている駐車場の不動産屋に行きました。保管場所使用承諾証明書をもらうためです。
ここでも義父が契約している駐車場を、夫の名前で契約し直さなくてはなりませんでした。
そして区役所へ住民票を取りに行きました。
それから、義父の軽自動車納税証明を再発行です。義父の紙の山から探している時間はなかったので、証明書にしました。
それをディーラーに届けました。
義父、人生最後の車、返却
S車購入から半月後、義父の人生最後の車の返却日です。
私たちは、その前日に義父の車を掃除して洗車しました。
車内はゴミだらけ。
軍手やガムテープ、ロープなどがたくさんありました。
空き缶、紙クズ、古新聞。
ハサミや包丁、ナタまであり、危険この上なし。
後部ガラスには、枯葉マークをテープでベタベタ貼っていたので剥がすのに苦労しました。
家の前で洗車していると、義父が帰ってきました。
私たちのことはまるで見えないようです。
自分が乗っていた車にも興味を示さず素通りします。
実は、この直前に義父の免許返納に成功していたのです!
義父は、自分が運転できないクルマを「無いもの」にしているようでした。
私は義父を呼び止めて、記念写真を撮りました。
義父を運転席に座らせてカメラを向けると、義父はよそゆきの笑顔を浮かべます。
翌日、義父のR車を返却するため、義父と3人でディーラーへ行きました。
R車は夫が運転し、義父は助手席です。
車を返却するという行動を伴うことで、その車は自分の手から離れたことを覚えていてもらいたいからです。
私は自分の車でついて行き、帰りは義父を後部座席に乗せて帰ってきました。
自宅近くまで来ると、いつものようにシートベルトを外し、ドアを開けようとします。まだ止まっていないのに。
でも乗っている車は2ドアです。義父はドアノブを探して車内をカリカリと引っかいていました。
その後
そして4日後、S車が納車されました。
色も形も、今まで義父が乗っていた車とは違うので自分の車とは認識していないようです。
念の為、車の鍵は私たち二人が常に持っていることにしました。
これでひとまず安心です。
義父が運転する車はなくなりました。
数日は車に乗るとも言わずおとなしくしていた義父でしたが、それはたった3日間のことでした。
気付くと自転車を買ってきていました。
近くの自転車量販店の、いちばん安い自転車です。腕力が低下してきている義父はフラフラしていてとても危なっかしい。
きっとどこかに忘れてきてしまうので、すぐに防犯登録番号を控えておきました。
「オレが買う」んじゃなかったの?
あんなにオレが買うから名前だけ書いてくれ、と言っていたのに、自分が運転できないものには関心がなくなったようです。
義父はS車の書類代やガソリン代どころかローン代金まで一切払ってくれませんでした。
結局夫は家のための車を1台買ったことになりました。
いくら軽自動車とはいえ、100万円を超える出費は大変なことでした。
あーあ…。